花は踊る 影は笑う~加賀見少年の非凡なる日常~

 中を見た千歳は顔を青ざめさせた。
 今日はやっぱり厄日らしい。
 犬猫に荒らされないようにと、屋根付扉つきの物置小屋のような作りになっているゴミ置き場の中が、引っ掻き回されたように荒れていた。
 ゴミ袋は幾つも破れて中に入っていたゴミが零れ落ちて散乱している。
「うわ、ひでえな」
 千歳の声で何事かと後ろから覗き込んだ綾人も思わず顔をしかめた。
「なんだよ。一体誰が……」
 中のあまりの様子に茫然として千歳は呟く。
 犬猫ではない。入れないように作ってあるのだ。扉を開けて中を荒らすなんて人間以外考えられない。
 けれど、千歳以外にここを使うのはせいぜい食堂の職員くらいで……そんなことするとは到底考えられない。
「誰かに恨みを買うような覚えはないけどな」
「うーん。確かに。千歳っち愛想は悪いけど人気あるもんなあ~……男女問わず」
「一言多い!」
 最後の一言が余計なお世話だ。
 カチンときて綾人を一喝すると校舎の裏玄関へ向かい箒と塵取りを持ってきて、千歳は黙々とゴミ置き場内を片付けた。
 気の毒に思ったらしい綾人も手伝ったおかげですぐに終わったものの、なんとも後味の悪い一日だ。
「さんきゅ。助かった。じゃな」
「ええ? 真っ直ぐ帰っちゃうの? せっかく会ったんだし、たまにはちょっと一緒に遊び行かない?」
 さっさと引き上げようとしたら綾人が慌てて引き止める。

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