花は踊る 影は笑う~加賀見少年の非凡なる日常~
「なんでお前と二人で遊びに行かなきゃならんのだ」
「うわ。露骨! 露骨に嫌な顔したね千歳っち。 いーじゃん、友達じゃん」
「いつからそーなった?」
「ええ? もう一年以上仲良くしててそれはないでしょー?」
「仲良くした覚えはないけどな」
勝手に綾人が付きまとっているだけ。千歳の中での綾人の認識はそんなものだ。
「ああっ。何て歯に絹着せぬ発言っ……でも、そんなとこがまたいいんだけど」
「だから……そういうのが気持ち悪いんだって」
綾人の理解不能な言動にはいつも振り回されてばかりだ。
嫌顔全開で千歳は溜息をつく。
「パス。今日疲れてるし……だいいち、遊んでる金なんて勤労学生にはないの。帰って寝る」
ゴミ置き場の扉をガチャンと少々荒っぽく閉めると、しっしっと追い払うように手を振りながら、綾人を残し千歳は我が家へと向かって足早にその場を後にした。
「もう……つれないなあ……」
残された綾人は後頭部を掻きながら苦笑を浮かべ、遠ざかっていく小柄な背中を見送る。
その背が校舎裏の片隅にある木立の影に見えなくなるまでそうしていたが、一度も振り返らない千歳にさすがに諦め、部室へ向かうことにした。
千歳の手伝いをしていたから少し遅くなった。
部室にはもう誰も残っておらず、無人の部室は、手痛く千歳に振られたばかりの綾人には少々寂しげに見えて居心地の良いものではない。