花は踊る 影は笑う~加賀見少年の非凡なる日常~

 小梅の話を聞いているうちに千歳の表情が曇る。その顔がすぐに綾人に向けられた。
「綾人。俺のことからかうのに小梅まで巻き込むのはどうかと思うぞ?」
「へ!?」
 疑い深い眼差しを向けられた綾人は思わずきょとんとすると、すぐさまぶんぶんと大きく頭を横に振った。
「いやいや! そんなことしてないし! ……ってか、俺どんだけ悪人扱い?」
「だってそうだとしか思えねえ。小梅がお前の冗談に進んで付き合うわけないし、お前がやらせてるに決まってる」
「千歳っち、それかなり無茶苦茶……」
「い~や、絶対そうだ」
 冤罪だとばかりに抗議する綾人に千歳が身を乗り出す。げんこつを落とそうと拳を握ったところで慌てて小梅が止めた。
「違うよちーちゃん。小梅ほんとに見たの。でも……でもでも……多分。ううん。人違いだったんだよ。小梅眠かったから……」
 そこまで言って、千歳が自分の方を振り返ったのを見ると、小梅はえへへと笑った。
「ちーちゃんの事ばっかり考えてたから、きっと幻覚見たんです」
「~~~~っ!!」
 途端に千歳の顔が……すでに紅潮していた頬が、これ以上ないくらいに真っ赤に茹で上がる。頭から湯気が吹き上がりそうな勢いで。
「怒らないで? ね。ちーちゃん」

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