花は踊る 影は笑う~加賀見少年の非凡なる日常~
◆襲撃



   +++

 そんなこんなで、授業が始まる頃にはようやく平静を取り戻していた千歳だったが……頭が沸騰するような目に遭ったせいか、症状は悪化していた。
 本当に熱が上がってきているようだ。背筋をぞくぞくと震わす悪寒は強くなる一方。体の節々も痛い気がする。
 ここに来て、本当に今日のバイトは休むことにして正解だったと思い始めていた。
 言い出しっぺの小梅に感謝する。
 たまには休むのもいいかもしれない。だいたい元はといえばあの研究所での水浴びが原因なのだろうから……一日くらい散らかった研究室で理事長に過ごしてもらってもバチはあたるまい。
 なんとか最後の授業までこらえたものの、終礼が終わる頃には冷や汗のようなものが吹き出し、体を起こしているのもつらいほどになっていた。
 皆が教室を出て行く中、糸が切れたように机に突っ伏する。
 小梅が来るまで少し休もうと思った。
 綾人に自分が来るまで千歳を見張っていてと小梅が頼んでいたが、その心配は無用のものだった。独りで無理をしてまで二人から逃げる元気など欠片も残っていやしない。
「お~い? 千歳っち。大丈夫か~」
 頭の上で綾人の声が聞こえる。そして肩を揺する手。それをうるさいとばかりに手で払いのける。
「大丈夫だから……静かにして……ろっ」

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