特別保健委員会
3:人体模型の難
怒濤トラブル生活の再スタートを匂わす、高校で初めての保健室乱入から一夜があけた。

憂鬱な顔で登校した私に、「昨日は大丈夫だったー?」なんて笑いながら言葉をかけてくれる同じく掃除当番だった友人たち。
曖昧な笑顔を返しながら自分の座席に向かう。

まさか必死に謝りに行ったらヤキを入れられそうになって、(ここまでならまだしも)サッカーボールが直撃して、その上つれて行かれた

保健室で変な委員会に任命されたなんて誰が信じるというのだろうか。
(私だったら信じないね。)
実際に体験した私だって今考えると、ヤキを入れられた衝撃で脳味噌が勝手にねつ造した出来事なのではないかと思えるのだから。

むしろ、そんなだったらいいけどね。
いいや、きっとそうに違いない。

私の危険回避能力皆無の脳味噌の素敵な考えに珍しく納得がいく。
あの爽やかな宮城さんとの出会いがチャラになってしまうのは惜しい気がするけれど。

そんなことを考えながら、授業を受ける支度をととのえる。
と、次の時間に必要な英和辞典がないことに気づいた。
こういう時に限って授業中に当たるというお約束は、イヤと言うほど体験してきている私の脳味噌が警報を鳴らす。
英語担当の先生、厳しかった気がするぞ。

「…。」

見上げた時計は始業7分前。
この位時間があれば、いくら私でも遅刻をせずに戻ってこれるだろう。
そんな甘い期待とともに、席を立つ。
隣のクラスまで、階段を挟んでいるとは言え、わずか往復10m弱。
早足で教室を出た。標的は、隣のクラスに在籍する同じ中学出身の友人。

自分の教室の前の扉からでて、後ろのドアを無事通過。
(よし、雑巾野球のボール=雑巾、は飛んでこなかった)
若干気を緩めた私は、小走りに階段踊り場前の廊下を抜けようとした。
そのとき。

よもや不幸は私を見逃さなかった。
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