春夜姫
「七年待ってやろう。七年の間に、この瓶を開けることが出来たなら、声はお前に戻る。出来なければこの小瓶を悪魔に渡そう。悪魔に渡してしまえばもう二度とお前に声は戻らない。七年寝かせた声など、滅多なことでは手に入らない。悪魔たちが競って求めるだろうよ!」

 急に風が吹いて、明るい部屋もお茶もお菓子もどこかへ消えました。魔女も風と共に消えました。
 春夜姫は小瓶を手にしたまま泣き続けました。声がなければ、話すことも歌うこともできません。泣いても泣いても、涙が出るだけ。春夜姫の喉からはひゅうひゅうと音がするばかり。

 草の上には、ただの石ころのように宝石が転がっていました。
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