春夜姫
 城を出て三十日。広い草原に、光り輝くような美しい牡牛と牝牛がいるのを、上の王子は見つけました。

 さっそく牛を捕まえようとしましたが、そこに突然、背が空まであるような大男が現れました。

『お前は何者だ』
 大男が喋ると、草原がぐらぐらと揺れます。上の王子は大男を見上げて、声を張り上げました。

「僕はここから西へ三十日歩いたところにある国の王子だ。あの牡牛と牝牛を国へ連れて帰りたい」

 すると大男は言いました。
『あれは俺の牛だ。ただではやれぬ。どうだ、四十日間あの牛の世話をしろ。そうしたら考えてやる』

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