春夜姫
 王様は息子たちを抱きしめ、祝福のキスをしました。
「旅は危険も多かろう。探し物が見つからずとも、百日経ったらきっと帰っておいで」

 百日。それが三人に与えられた期限でした。

 王様とお后様、たくさんの家来たちに見送られて、王子たちは城を出ました。


 東へ向かった上の王子は、こんな噂を耳にしました。

「ずっと東に、美しい牡牛と牝牛のつがいがいる」

 このつがいを連れて帰れば、畑仕事に使えるでしょうし、乳も取れるでしょう。美しい牛を見るために、他の国からも人がやって来て、国が富むことでしょう。
 そう考えた上の王子は、東へ東へと歩いて行きました。
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