春夜姫
 真ん中の王子は西へと向かいました。

「西の果てには、どんな傷も癒す魔法の木がある」
 国の昔からの言い伝えです。その木を持ち帰れば、きっと国のためになります。真ん中の王子は、その木を求めて西へ歩き続けました。

 西へ西へ、真ん中の王子は三十日歩きました。そうしてたどり着いた西の果てには、王子の身長ほどの木が一面に広がっていました。

「これが言い伝えにある、魔法の木の森だな」
 そう思った真ん中の王子は、森へ踏み込もうとしました。しかし、何かが真ん中の王子を引っ張ります。

「おい、お前」
 呼ばれて、真ん中の王子は辺りを見回しましたが、誰もいません。
< 38 / 111 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop