春夜姫
「下だよ、人間」

 そして視線を落とすと、膝丈にも満たないような小人が、真ん中の王子の服を引っ張っていました。

「俺たちの森に勝手に入ろうとしたな」

 いつの間にか、真ん中の王子はたくさんの小人に囲まれていました。みな、目尻を上げて怒っています。慌てて真ん中の王子は、ここまで来た理由を説明しました。

「なるほど」
「話はわかったぞ」
 口々に小人は言いました。

「どうか一株、この木を分けてくれないか」
 真ん中の王子は小人たちに頼みました。小人たちはしばらくひそひそと話し合い、またばらばらと話しました。

「これから俺たちは」「全ての木の」「剪定をするんだ」「高いところの枝を」「いつもは梯子を使って切るが」「丁度良い、お前さん」「手伝ってくれよ」
 小人たちはそこで声を揃えました。

「そうしたら、木を分けてやるからさ」
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