ゆれる
「まだ帰らないの?」
アイツの顔がガラス越しに映る。
清潔な短さの髪。
栗色の目。
溶けてしまいそうな程優しい、声。
「・・・まだ帰りたくない」
私は校庭を眺めたまま答えた。
「どうして?今日は特別な日じゃない。早く帰らなきゃ」
全部知ってるくせに。アイツは時々意地悪だ。
「そうだね。死へのカウントダウンが始まった日だもんね」
私はもっと意地悪い返事をした。
「うわぁ中学生らしい最高に頭の悪い答え方だね」
日が射してきた。教室は消しゴムの匂いがする。