ゆれる

マンションのドアを開ける。

分かっていたけれど絶望的な見慣れた光景。

玄関にはよれた赤いピンヒールと、知らない男物の革靴。

また、新しいオトコ。


リビングからあほみたいにはしゃぐ声が聞こえる。

私は自分の部屋に入ると、わざと大きな音を立ててドアを閉めた。



「燈子?・・・帰ったの?」

何度言ってもドアをノックしないこの女は相当低脳だ。


「帰ってきちゃ悪かった?ごめんなさいね邪魔しちゃって」


「邪魔じゃないけど・・・カレが来てるから燈子も挨拶しておいたほうがいいんじゃないかって」


「あほくさ」


この女は一体なんなんだろう。娘にわざわざ彼氏を見せびらかしたいんだろうか。

ぎりぎり、と私の歯軋りの音が部屋に響いた。
< 4 / 6 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop