龍馬! ~日本を今一度洗濯いたし候~
した。そして陸奥守吉行に手をかけた。脳奬まで流れてきた。
龍馬はすばやく背後へ身をひねった。
刺客たちは龍馬をさらに斬りつけた。左肩さきから左背中にかけて斬られた。しかし、龍馬は刀をかまえて跳ねるように立ちあがった。
刺客たちは龍馬をさらに斬りつけた。
ようやく龍馬は崩れた。……「誠くん、刀はないがか?」と叫んだ。
誠くんとは中岡の変名石川誠之助のことで、その場で倒れていた男に気遣ったのである。 龍馬は致命傷を受けてなおも気配りまで忘れない。刺客たちは逃げ去った。
「慎ノ字……手は利くか?」
「……利く」
「なら医者をよんで…こい」
中岡は息絶えた。
龍馬は、冷静に自分の頭をおさえ、こぼれる血や脳奬を掌につけてながめた。
龍馬は中岡をみて笑った。澄んだ、壮快な気持ちであった。
「わしは脳をやられている。もう、いかぬ」
それが最期の言葉となった。いいおわると、龍馬は倒れ、そのまま何の未練もなく、その霊は天に召された。
坂本龍馬暗殺………享年三十三歳
天命としかいいようがない。日本の歴史にこれほどの男がいただろうか? 天が歴史をかえるためにこの若者を地上におくりこみ、役目がおわると惜しげもなく天に召したとしか思えない。坂本龍馬は混沌とする幕末の扉を押し開けた。
幕末にこの龍馬がいなければ、日本の歴史はいまよりもっと混沌としたものになっていたかも知れない。龍馬よ永遠なれ!
この言葉をもって、この小説のおわりとしたい。 おわり

