龍馬! ~日本を今一度洗濯いたし候~

「それはイギリスとの戦争じゃきにですか?」龍馬はきいた。
 勝麟太郎は「そうだ」と深く頷いた。
「じゃきに、先生はイギリスと戦えば絶対に負けるとはいうとりましたですろう?」
「その通りだ」
「じゃきに、なんで戦せねばならぬのです?」
「一端負ければ、草奔の輩も目を覚ます。一度血をあびれば、その後十年で日本は立て直り、まともな考えをもつ者が増えるようになる。これが覚醒だぜ」
「そりゃあええですのう」龍馬は頷いた。
  京都に入ると、目付きの悪い浪人たちが群れをなして近付いてくるではないか。龍馬と以蔵はいつ斬りこまれてもいいように間合いを計った。
 浪人が声をかけてきた。
「貴公らはいずれのご家中じゃ?」
 以蔵はわめいた。「俺の顔を知らんがか。俺は岡田以蔵じゃ! 土佐の人斬り以蔵を、おんしら、知らんがか?!」
 以蔵は左手で太刀の鯉口を切り、右膝を立て、浪人を睨む。
「これはおみそれした」
 以蔵の名を聞いた浪人が、怯えた表情を隠さず、引き下がった。
 龍馬と勝麟太郎のほうを振り返り、以蔵はいう。
「今の奴がなんぞほざきよったら、両膝を横一文字にないじゃったがに、惜しいことをしたぜよ」以蔵の目が殺気だっているので麟太郎は苦笑した。
「以蔵はひとを斬るのがよほど好きなのだな。だが殺生は控えてくれよ」
 

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