龍馬! ~日本を今一度洗濯いたし候~
6 和睦と新選組




 京都にしばらくいた勝麟太郎は、門人の広井磐之助の父の仇の手掛かりをつかんだ話をきいた。なんでも彼の父親を斬り殺したのは棚橋三郎という男で、酒に酔っての犯行だという。
「紀州藩で三郎を捕らえてもらい、国境の外へ追い出すよう、先生から一筆頼んでくださろうか?」
 麟太郎は龍馬の依頼に応じ、馬之助に書状をもたせてやった。
 馬之助は二十七日の朝に戻ってきて、「棚橋らしい男は、紀州家にて召しとり、入牢させ吟味したところ、当人に相違ないとわかったがです」
 麟太郎は海軍塾の塾長である出羽庄内出身の佐藤与之助、塾生の土州人千屋寅之助と馬之助、紀州人田中昌蔵を、助太刀として紀州へ派遣した。龍馬は助太刀にいかなかった。「俺は先生とともに兵庫へいく。俺までいかいでも、用は足るろう」龍馬はいった。
 棚橋は罠にかかった鼠みたいな者である。不埒をはたらいた罰とはいえ、龍馬は棚橋の哀れな最期を見たくなかった。
 六月二日、仇討ちは行われた。場所は紀州藩をでた、和泉山中村でおこなわれた。
 見物人が数百人も集まり、人垣をつくり歓声をあげる中、広井磐之助と助太刀らと棚橋三郎による決闘が行われた。広井と棚橋のふたりは互いに対峙し、一刻(二時間)ほど睨み合っていた。そして、それから広井が太刀を振ると、棚橋の右小手に当たり血が流れた。さらに斬り合いになり、広井が棚橋の胴を斬ると、棚橋は腸をはみだしたまま地面に倒れ、広井はとどめをさした。

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