龍馬! ~日本を今一度洗濯いたし候~

 麟太郎は、順動丸に乗り込む塾生の坂本龍馬や沢村たちを褒めてやった。
「おぬしどもは、だいぶ船に慣れたようだな。あれだけ揺れても酔わねぇとはたいしたもんでい」
 麟太郎の船酔いはいつまでもなおらない。船が揺れるたびに鉢巻きをして、盥に吐き続ける……おえおえおえ。
 神戸海軍塾は、操練所より先に完成していた。龍馬たちは専称寺から毎日荷物を運んだ。 麟太郎は順動丸を神戸に移動させて、新井某に、航海でいたんだ箇所を修繕させ、十五日の朝、砲台建設箇所を見聞したあと、操練所と海軍塾を見た。
 海軍塾は麟太郎の私塾である。建設費用は、松平春巌から出資してもらった千両で充分まかなえたという。
 佐藤与之助にかわって坂本龍馬が海軍塾塾頭になり、その龍馬が建前入用金を記した帳簿を麟太郎に見せた。
「屋敷地八反余、ならびに樹木代六両とも五十二両。
 建物一ケ所、右引移り。地ならしとも三十両。
 塾三門(約五・四メートル)幅、長さ十間(十八・二メートル)、新規畳健具とも百七                 
十両。ほか台所、雪隠(トイレ)、馬屋、門番所、新規七十七両……」
 ほかにも塀や堀、芝などの代金がこまごまのっていたという。
 麟太郎は感心して「お前は何事も大雑把なやつだと思っていたが、以外とこまごまとした勘定をするのだな」と唸った。
 
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