龍馬! ~日本を今一度洗濯いたし候~

 龍馬は師匠にほめられてぞくぞくと嬉しくなった。
「じゃきに、先生とわしは生い立ちが似ちょうとるきに。わしの祖父も商人だったっきに勘定もこまのこうなるますろう」龍馬は赤黒い顔に笑みを浮かべた。
 麟太郎がみると、塾はまだ未完成で、鉢巻きの人足が土のうをつみあげている最中であった。「龍馬、よくやった!」勝海舟は彼をほめた。
 翌日、ひそかに麟太郎は長州藩士桂小五郎に会った。
 京都に残留していた桂だったが、藩命によって帰国の途中に勝に、心中をうちあけたのだ。
 桂は「夷艦襲来の節、下関の対岸小倉へ夷艦の者どもは上陸いたし、あるいは小倉の繁船と夷艦がともづなを結び、長州へむけ数発砲いたせしゆえ、長州の人民、諸藩より下関へきておりまする志士ら数千が、海峡を渡り、違勅の罪を問いただせしことがございました。
 しかし、幕府においてはいかなる評議をなさっておるのですか」と麟太郎に尋ねた。
 のちの海舟、勝麟太郎は苦笑して、「今横浜には諸外国の艦隊が二十四隻はいる。搭載している大砲は二百余門だぜ。本気で鎖国壤夷ができるとでも思ってるのかい?」
 といった。
 桂は「なしがたきと存じておりまする」と動揺した。冷や汗が出てきた。
 麟太郎は不思議な顔をして「ならなぜ夷艦砲撃を続けるのだ?」ときいた。是非とも答えがききたかった。
「ただそれを口実に、国政を握ろうとする輩がいるのです」
「へん。おぬしらのような騒動ばかりおこす無鉄砲なやからは感心しないものだが、この日本という国を思ってのことだ。一応、理解は出来るがねぇ」
 数刻にわたり桂は麟太郎と話て、互いに腹中を吐露しての密談をし、帰っていった。

  
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