龍馬! ~日本を今一度洗濯いたし候~
「京都の様子はどうじゃ? 浪人どもが殺戮の限りを尽くしているときくが……余は狙われるかのう?」
「いいえ」麟太郎は首をふった。「最近では京の治安も回復しつつあります。新選組とかいう農民や浪人のよせあつめが不貞な浪人どもを殺しまくっていて、拙者も危うい目にはあいませんでしたし……」
「左様か? 新選組か。それは味方じゃな?」
「まぁ、そのようなものじゃねぇかと申しておきましょう」
 麟太郎は答えた。
 ……さぁ、これからが忙しくたちまわらなきゃならねぇぞ…

                  
  若き将軍・徳川家茂の上洛は海路よりとられ、やがて上陸した。
 この夜、家茂は麟太郎を召し寄せ、昼間の労をねぎらい、自ら酒の酌をして菓子を与えるという破格の扱いをしたという。
 船は暴風にあい、あくる日、子浦にひきかえした。
 各艦長らは麟太郎を罵り、「上様に陸路での上洛をおすすめいたせ!」といきまいた。 その争論をきいた家茂は「いまさら陸路はできぬ。また、海上のことは軍艦奉行がおるではないか。余もまたその意に任す。けして異議を申すではない」とキッパリ言った。
 この”鶴の一声”で争論は止み、静寂が辺りを包んだ。麟太郎は年若い家茂の決然とした言葉を聞き、男泣きに泣いたという。
  麟太郎は家茂の供をして大阪城に入った。
 勝海舟(勝麟太郎)は御用部屋で、「いまこそ海軍興隆の機を失うべきではない!」と力説したが、閣老以下の冷たい反応に、わが意見が用いられることはねぇな、と知った。
  麟太郎は塾生らに幕臣の事情を漏らすことがあった。龍馬もそれをきいていた。
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