龍馬! ~日本を今一度洗濯いたし候~

 早朝、池田屋から新選組はパレードを行った。
 赤い「誠」の旗頭を先頭に、京の目抜き通りを行進した。こうして、新選組の名は殺戮集団として日本中に広まったのである。江戸でもその話題でもちきりで、幕府は新選組の力を知って、隊士をさらに増やすように資金まで送ってきたという。

「坂本はん、新選組知ってますぅ?」料亭で、芸子がきいた。龍馬は「あぁ…まぁ、知ってることはしっちゅぅ」といった。彼は泥酔して、寝転がっていた。
「池田屋に斬りこんで大勢殺しはったんやて」とはのちの妻おりょう。
「まあ」龍馬は笑った。「やつらは幕府の犬じゃきに」
「すごい人殺しですわねぇ?」
「今はうちわで争うとる場合じゃなかきに。わしは今、薩摩と長州を連合させることを考えちゅう。この薩長連合で、幕府を倒す! これが壤夷じゃきに」
「まぁ! あなたはすごいこと考えてるんやねぇ」おりょうは感心した。
 すると龍馬は「あぁ! いずれあいつはすごきことしよった……っていわれるんじゃ」と子供のように笑った。
 
  十二日の夕方、麟太郎の元へ予期しなかった悲報がとどいた。前日の八つ(午後二時)三条通木屋町で刺客の凶刀に倒れたという。
「俺が長崎でやった拳銃も役には立たなかったか」
 勝麟太郎は暗くいった。ひどく疲れて、目の前が暗く、頭痛がした。
 象山はピストルをくれたことに礼を述べ、広い屋敷に移れたことを喜んでいた。しかし、象山が壤夷派に狙われていることは、諸藩の有志者が知っていたという。
「なんてこった!」
 のちの勝海舟(麟太郎)は嘆いた。
「勝先生……どげんすっとじゃろう?」龍馬はその報をきいて、勝海舟がどんな動きをみせるか、興味を、もった。                            

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