赤の世界
「いい事だよ…」
何を言われるかは
なんとなく想像がついていた。
「祝ってくれるひとがいるって」
(やっぱり。)
楓は本当は寂しいんだ。
明るく勤めていた楓が
初めて寂しそうな顔をした。
その表情を見ると
胸が締め付けられるようで。
悲しそうな楓の顔を
見るのが苦しい。
「俺に何か出来ないかな?」
「え…?」
唐突な申し出に
楓も少し混乱したようだ。
けれどすぐに笑顔になって
優しい目で俺を見る。
「じゃあプレゼント交換して?」
そう言って楓が
俺の買ったケーキを手に取る。
「そんな事でいいの?」
「悠からのケーキが食べたいの」
「わかった」
そう答えると楓は
自分のケーキを俺に渡した。
「ありがとう」
テーブルの隅に置いてあった
ナフキンを取り出して
短い誕生日メッセージを
お互いに書く。
それをケーキの箱にはさんで…
立派なプレゼント交換になる。
笑顔に戻った楓を見つめて
今日は満足な誕生日だと思った。