Blood†Tear
一滴の涙を流したクレアは巨大な鎌を手にし地を蹴った。
コウガとの距離を一気に縮めると、掲げた鎌を躊躇いもなく振り下ろす。
「落ち着け、クレア……今の君は混乱しているだけだ…そんな状態で的確な判断ができていない……だから、少し落ち着こう、クレア……」
彼女を止めようと、動揺しながらも声をかけるコウガ。
後ろへ跳び後退しながら振るわれる鎌を交わす。
しかし彼女は鎌を振り続け、話を訊く気はないようだ。
「これ以上誰かを殺す前に…お願いだから……お願いだから私を…私を―――」
―――助けて……
消え入りそうな声だった。
だが、確かに聞こえた。
彼女の悲痛な叫びが。
彼女の助けを求める心の声が。
「クレア…君は……」
死にたいんじゃない。
殺して欲しいんじゃない。
助けて欲しいんだ。
心の闇から救って欲しいんだ。
しかし彼が気づいた時には既に遅かった。
鎌を振るっていた彼女は突然動きを止め瞳を閉じる。
声が届いたのかと安心しかけたが、開かれた瞳の色を目にした瞬間彼は息を呑んだ。
その瞳は先程とは異なるもの。
血のように赤く染まるそれは、紛れもなく狂ったあの時と同じ瞳の色だった。
「…フフッ……ハハハッ…ハハハハハッ……」
闇へと手を伸ばし、身を任せた彼女は血に狂う。
自我を失った彼女は突然声を上げ笑い出したかと思うと笑みを消し、コウガを暫く睨むと唇を舐め妖艶に微笑んだ。
ドキリと胸が騒ぎ、警戒するように目を細めると、彼女は地を蹴り彼の目の前に移動する。
先程とは比べ物にならない速さ。
振り下ろされた鎌を何とか交わすが、攻撃は止まらない。
「…クレア…しっかりしろ……!」
剣を手にする事なく応戦し、何とか傷つける事なく彼女を止めようと試みる。
右から、上、真横、斜め、次々に繰り出される攻撃に身を捻り、後ろに跳びながら回避する。
しかし、後退し続けた彼は木の幹に背をぶつけ、逃げ場を失ってしまった。
「…お遊びは、終わりだ……」
「くっ……」
追い詰めた彼女は口の端を上げ笑い、獲物を仕留めるべく鎌を振り下ろした。