Blood†Tear

 「…しかし、ヴィネッド家は13年前に滅んだと……一族の血は絶えたと……」


ヴィネッド家。
スウィール国に長年身を置く、全国に有名な名のある貴族。

社交的で人当たりがよく、とても愛想のいい気さくな家系であり、反感を買う事無く誰からも愛される一族だった。


しかし、13年前のある嵐の夜、ヴィネッド家は奇怪な死を遂げ一族の血は絶えた。


猟奇的殺人者による一族惨殺事件。


その被害に合ったのがヴィネッド家。



無惨な死を遂げた一族の中で生存者が居たとは聞いていない。


目の前で悪戯に微笑む彼女は、そのヴィネッド家の生き残りだと言うが、それは真実か否か。





 「確かに、あの日私の家族は全員死にました。しかし、私だけは運良く生き残る事ができたのです。私が無事である事は誰一人知り得ぬ事実。驚くのも仕方ありませんわ」


悲しそうに細められたそのオレンジの瞳には見覚えがある。


嘘ではない。

間違い無く、目の前の彼女は本物のティムリィ・ヴィネッドそのものである。




 「…ティム……本当にティムなのですね……」


 「えぇ、本当ですよシェノーラ様。私は、貴女が以前妹のように可愛がってくれたティムリィです。お会いできて嬉しいですか?喜んで頂けますか?シェノーラ様」


幼い頃から親しく、仲の良かったシェイラとティムリィ。


死んだと聞かされていた彼女との久々の再開に現状を忘れ、シェイラはその瞳に涙を浮かべ喜ぶが、一方のティムリィは彼女を冷たく見下ろした。




 「…私は嬉しくも何ともありませんけど」


 「え……?」


彼女の呟いた言葉に耳を疑う。

しかし、それは聞き間違えではないようだ。




 「だって私は、貴女の事が大っ嫌いなのですから」


ティムリィは何の感情もこもらぬ声でそう言うと、シェイラの顔に勢い良く紅茶をかけた。




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