魅惑のヴァンパイア
「この仮面、何のためにつけていると思う?」


私の返事を待たずにピーターは話した。


「ヴァンパイアになりそこねた醜いコクーン共の嫉妬を買わないためさ。昔、ヴァンパイアが襲われ殺される事件が多発した。一対一ならもちろんヴァンパイアが勝つが、彼らは仲間意識が強く、多勢で襲ってくる。そして、いつしか公の場で仮面を付けることが礼儀となったのさ」


この仮面にはそんな血生臭い歴史の意味が。


言葉を発することさえできずに、ゾクっと悪寒を感じた。


「さぁ、そんな顔をしないで。僕と一緒に楽しく踊ろう」

 
アップテンポな曲調に変わり、ピーターは笑顔で私を回し始めた。


楽しく踊るなんてこと、できるはずがなかった。


身体を人形のようにピーターに預けながら、頭は死の呪いのことで一杯だった。
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