魅惑のヴァンパイア
「ふっ……」


笑いの残滓が部屋に空響いた。


小さく自嘲すると、紅茶を手に取っていた少女が、キョトンとした目でピーターを見た。


「ヴラドが夜まで帰って来ないなら、ここにいても仕方ないな。失礼するよ」


「あっ…でも……」


少女は入れたばかりの紅茶に目をやった。


「玄関までお送り致します」


バドはサッと部屋のドアを開けた。


厄介者は一秒でも早く屋敷から出したいというわけか。


この執事、僕に喧嘩を売っているつもりか?


「すまないね」


心とは裏腹に、オレンジ色のマントをバサっと翻し、笑顔を見せて部屋を出た。


もちろん、目だけは笑わない。


それは執事も同じこと。
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