魅惑のヴァンパイア
「……子猫ちゃんはアップルパイが嫌いなのかい?」


「……そのようですね」


 出て行ったシャオンの後ろ姿を見つめ平然と言う執事。


――しらじらしい嘘を。


 ピーターは椅子に深く座りなおして、はぁと大きなため息が出た。


「だからあれ程早くヴァンパイアにしろと言ったのに」


 執事は顔色一つ変えず、ドアの横に背筋を張り、ピンと佇んでいた。


「ごめんなさい。ちょっと気分が悪くて」


ハンカチを口に当て、真っ青な顔で戻ってきた。


シャオンが椅子に座るのを待って、ピーターは毅然とした態度で口を開いた。


「……で、子猫ちゃんはどうするつもりなんだい? 産むのかい?」


 大きく目を開かせ、驚いた顔でピーターを見つめてから、気まずそうに瞳を下に伏せた。
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