魅惑のヴァンパイア
「……産みます」


 堕ろしたところで、死ぬことには変わりないがどうしても聞いてみたかった。


「そうか。それで、ヴラドはこのことを知っているのか?」


 瞳を伏せたまま、フルフルと首を横に振った。


きつく両手を組んだ手に力が入っているのが分かった。


「……どうして言わない」


 無言。


どんなに見つめても、顔を上げてくれなさそうだった。


「可愛そうだが、間違いなく君は死ぬ。残り少ない人生を、愛する人と穏やかに過ごしたいとは思わないのか?」


 無言。


返事の代わりに涙が一滴、固く握りしめた手の甲にポタリと落ちた。


「おいおい、これじゃ僕が君をいじめているみたいじゃないか」


するとシャオンは顔を上げ、話し出した。


「ご、ごめんなさい。私……私、ヴラドに迷惑を掛けたくなくて」


「迷惑? どうして迷惑なんだ」


 ぎゅっと唇を噛み締めている様子に、まさかという思いが横切った。
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