魅惑のヴァンパイア
ヴラドは感情のない顔でただ微笑んでいるだけだった。


「さぁ、行かなくては……」


 ヴラドは踵を返して、暗黒色の世界へと歩いていく。


 その方角は、以前夢で見た、お父さんとお母さんが歩いていった方角だった。


「嫌っ! 行かないで!」


 引き止めようと、マントの裾を掴もうとしても、なぜか、あと数ミリで掴み損ねる。


「駄目! 駄目っ! 行っては駄目!」


 急いで追い掛けても、どんどん後ろ姿は遠くなる一方だった。


「ヴラド……ヴラド……!!」


 どんなに呼んでも、ヴラドは振り返ってはくれなかった。


 そして、お父さんやお母さんのように体が闇に消えていこうとしていた。


「行かないで……行かないで……いやぁぁぁぁーーーーー!!」
< 244 / 431 >

この作品をシェア

pagetop