魅惑のヴァンパイア
ハッとして目を覚ますと、見慣れた天井が目についた。


良かった……夢だったんだ……。


ほっとして、大きく息を吸い込んだ。


 右手に感じる暖かな温もり。


 横を見ると、ヴラドが心配そうに私の顔を見つめていた。


「え……ヴ…ラド?」


 まだ夢の続きを見ているのではないかと思って、頭が混乱した。夢にしては、感覚がリアル過ぎる。


「うなされていたぞ。怖い夢でも見たのか?」


 ヴラドはそっと私の頬を撫で、涙の跡を拭ってくれた。


「これは……夢?」


 思っていることを素直に口に出すと、ヴラドはふふっと笑った。


「夢じゃない。なんなら今からこれが現実だと身体で教えるか?」


 悪戯っぽい微笑み。


 ヴラドがこんな目をする時は、決まって『あの事』をする前だ。
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