魅惑のヴァンパイア

脳が溶けて、暗闇の世界で混ざり合うのではないかと思っていた時、突然闇が喋りだした。


　どこから聴こえるのかも分からない。


　透明で澄み渡る女神のような声だった。


「私は魔界の王ヴラドだ！　死の国を治めるという長に会いに来た！」


　ヴラドはどこを見て話したらいいのか分からず、とりあえず上を見上げ、あらんかぎりの大きな声を出した。


　すると黒の世界は、突然真っ白の世界になり、余りの輝きに目が潰れてしまいそうになった。


『お前が王である証（あかし）を見せよ』


　何重にも重なって聴こえる声は、冷たくヴラドを試した。


　……証？


　ヴラドは何か証明できるものを探したが、なかったので半ばヤケクソで叫んだ。


「私の腹の中に、王の証がある！　調べるがいい！」