魅惑のヴァンパイア
両手を広げ叫んでみたものの、腹の中にあるものをどうやって調べろというのか、自分でも無茶苦茶なことを言っているとは分かっていたが、他にどうすることもできなかった。


 しかし、風が全身を包み込んだ瞬間に、腹に暖かな温もりを感じた。


『よろしい。拝見した』


 不思議な声は、少し優しい口調へと変わり、真っ白な世界は一瞬で城の内部へと変化した。


 赤絨毯が真っ直ぐに敷かれ、玉座には立派な宝飾が施された椅子に、玉鉾を持った女性が座っていた。


 身体の形で女性だとは分かるものの、顔は靄がかかったように見えなかった。


「あなたは……?」


 赤絨毯の上に立ち、玉座を見上げながらヴラドが尋ねた。


『わらわはお前が探していた者じゃ』


 穏やかで優しい声色だった。


「あなたが死界の長……!」


 ヴラドは慌てて片膝を立て跪いた。


 長と聞いていたので、てっきり男だと思っていたので驚きはひとしおだった。
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