魅惑のヴァンパイア
そんな時、ニコリとも笑わない男に気が付いた。


男はふてぶてしく玉座に座り、グラスの中の紅色に輝く液体に口をつけることなく、ただ黙ってわらわ達を見ていたのじゃ。


 圧倒的な威圧感。


 わらわは息を吸うことも忘れるくらい、その男に釘付けとなった。


 輝く黒髪。澄んだ蒼い瞳。


 王というからには、歳を取った中年男を想像していた。


 しかしわらわの瞳に映っているのは、恐ろしいくらい端整な顔立ちの青年だったのだ。


 わらわはずっと王を見つめ続けていた。


 王もわらわ一点だけを見つめていた。


 時も忘れる程見つめあっていた時、大臣の一人がわらわの目線に気が付いた。


 王を見つめることなどあってはならないことなのだ。


 大臣は怒り、わらわに剣先を向けた。


……その時。
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