魅惑のヴァンパイア

死界の怨霊

塔の最上階。


まるで幽閉するために作られた牢のような部屋。


分厚い石壁に囲まれ、覗き穴程度の窓が一つ。


部屋の真ん中には黒木で作られた大きな机に、魔界の地図が置かれている。


 ここは作戦本部兼ラシードの部屋。


 ラシードはここで大半の時を過ごす。


 数刻前、鷹が運んできた手紙を握りしめ、ラシードは大きなため息をついた。


 ……吉凶の前触れか。


 ラシードは小さな窓から外を眺めた。


 吐息さえ、中に充満してしまいそうな部屋だが、ラシードはここが気に入っていた。


 大事な会話が外に漏れないように作ったこの部屋は、一人になりたい時にはうってつけだった。


 また、小さな窓ではあるが、そこから眺める景色は素晴らしかった。


元々魔界全てが見渡せるように作られたこの窓は、魔界の様子を知るためだけではなく、人々の生活の息吹さえも見渡せる。

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