魅惑のヴァンパイア
ラシードは最上階から秘密結社の住人達の笑顔を見ることが何よりも好きだった。


魔界から隔離されたこの場所は、山一つ分の大きさがあり、大半が森で囲まれている。


人々はここで農作業をしたり、狩りや武術鍛錬に明け暮れている。


 魔界が秋と冬の季節しかないのに対して、ここは春と夏の季候しかない。


年中暖かく、人々は皆生き生きと楽しく生活していた。


 しかし根底には、どこにも受け入れてもらえない差別される悲しみがあった。


 結社の半分近くは魔界でひっそりと暮らしており、中には重要な職に就いている者もいる。


本人が素性を語らなければバレることは極めて少ないのだが、もし素性がバレれば忌み嫌われ、殺される危険性がある。


 昨日まで仲良くしていた隣人でさえ、人間とヴァンパイアの子供だと知った途端、手の平を返すのである。
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