魅惑のヴァンパイア
 心臓は一向に治まってくれない。


泣いたら止まらなくなると思ったので、唇を噛みしめて必死で我慢した。


でも、身体中が震えて上手く感情の整理ができない。


「ヴラド……ヴラドっ」


 泣きながらペンライトを両手でぐっと握りしめ、額に押し付けた。


 立て、立て、立て。


立って歩くんだ。


止まっちゃいけない。


 鼻水を啜って、大きく深呼吸して、ふらつきながら立ち上がった。


まだ両足が震えている。


それでも一歩、足を踏みだした。


《シャオン……》


 ヴラドの声が聴こえる。


それだけが、心の支えだった。

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