魅惑のヴァンパイア
「早くっ! 早くヴラド!」


 黒い物体から大きな手が出てきた。


にゅるにゅると伸びていく大きな手は、逃げようとする私たちの前に立ち塞がる。


左が空いていたので、左方向に逃げようとすると、また大きな手が出てきて方向を塞がれた。


そうして、私たちの逃げ場は完全に閉ざされた。


「なに……これ……」


「魑魅魍魎だ」


「ちみもうりょう?」


 オウム返しのように聞くと、ヴラドは黒い物体を睨みつけながら説明してくれた。


「悪霊や怨霊の塊だ。
強い怨念の霊に引き寄せられた霊達が固まり、一体の恐ろしい化け物になる。

なるほど、最初に襲って死界の奥に迷い込ませたのは、時間を稼ぐためだったのか。
怨霊を集め、確実に俺を殺せる時まで機会を伺っていたのだな」


 言われてよく見てみると、黒い物体の奥には何百という数のドクロが呻いていた。


様々な大きさのドクロが、苦しそうな断末魔を上げている。


 余りにも恐ろしい様子に、ペンライトを握る手が震えていた。


 しっかりしなくちゃ。


せっかくここまで来たのに。
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