魅惑のヴァンパイア
「待て」


 ラシードが口を開くと、振り上げた拳はピタリと止まり、混乱した空気が一瞬にして静まり返った。


「ヴラド様が現れたとは本当のことだな?」


 鋭い目付きで男を睨むと、男はゴクリと喉を鳴らした。


「は、はい。本当でございます。ヴラド様がシャオン様を抱え、血相を変えていらしたのでございます!」


「シャオン様を抱え? 何かあったのかもしれない。すぐに行こう」


 ラシードの言葉で、十字傷の男は、胸ぐらを掴んでいた手を放した。


 会議をしていた5、6人の男達は、ラシードがマントを翻し風を使うと、それに引き続き一斉にマントを翻し姿を消した


 ラシードの部屋には、報告に来た男だけが力なく床に座り込んでいた。
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