魅惑のヴァンパイア
その様子を見た十字傷を負った男が慌てて口を挟んだ。


「ラシード様、何も今聞かなくても! 死の呪いを解き、ヴラド様が無事帰ってきてくれたのですから慌てる必要はないかと」


「慌てる必要がない?」


 ラシードは冷たい目線を十字傷の男に向けた。


「……問題はヴラド様が帰ってくる前より悪くなっている」


 その言葉に、ヴラドの耳がピクっと動いた。


「お前たちだって気付いているだろう? 
ヴラド様から放たれる人間の匂いが。

どうしてこんなことになってしまったのか。
私たちは知らなければならない」


 皆がそういえば! という表情でヴラドから放たれる匂いを嗅いだ。


この混乱の中、気付いていたのはラシードだけだったらしい。


「ふん……。まぁ仕方がないか。
魔界の王が人間と化してしまったのだからな。この姿では二度と王座に戻れるまい」


 ヴラドは悲しむ様子もなく、むしろ清々しい様子だった。
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