魅惑のヴァンパイア
ポロポロと涙が零れてきた。


ヴラドから食器を奪って、自分でご飯を食べた。


……大丈夫、もう咳込まない。


涙が溢れて、全部の食事が、塩っぽかった。


「俺を、好きになるな」


最後の一口を咽に詰め込んで、ヴラドを真っ直ぐに見つめた。


「……絶対に、好きになんてならない」


頬に涙が伝っていた。


それでも真っ直ぐにヴラドを見た。


自分に、言い聞かせるように。


「……いい子だ」


ヴラドは私の髪を一房取って、香りを吸い込むように口付けすると、私をベッドに押し倒した。


優しくて……強引なキス。


涙が目尻の横に溢れても、泣き声じゃない啼き声を漏らしても、愛されていないと分かっていても、拒むことはできなかった。


忠告されたって、拒まれたって、もう遅い。


すでに私は、身も心もヴラドに奪われていたのだから。
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