朧気歌
「…」
「……」
「…」
しばらく病院で慶太とお医者さんとみんなの沈黙が続いた。
「骨折してますね。3週間は無理に作業させないほうがいいでしょう。」
「わかりました。失礼します。」
先生はそう言うと、私たちを連れて外へ出た。
私がうつむいていると、先生のごつごつした手がふいに私の頭を軽く触った。
「佐藤、よく教えてくれたな。彼は心配ないから。もう遅いだろ。明日遅刻したら大変だ。今日はもう帰りなさい。」優しい声だった。
連なる短すぎる文章を理解するのにさほど時間はかからなかったが、私は少し躊躇して病室のほうを見た。
「でも…」
「帰りなさい。親御さんも心配するぞ。」
今度はさっきよりずっと怖い声色だった。
「…はい、さようなら」
私も逆らえなかった。
…背中が広い人がいないというのは、なんとも寒々しい。
今日は慶太がいない日。それだけでなんとなく退屈になってしまうなんて。
「おはようございます」
聞き覚えのあるしっとりした声。もしやと思って目をやると……
__嘘でしょ!?学校に来てる!!!!
そこには、左腕にギブスをはめた慶太の姿があった。
「お前、腕どうしたんだよ!!」
「はは、ちょっと折っちゃった」
普段と変わりない様子の慶太。それが痛々しくて、なんだか悲しくて、もどかしくて。私の目には思わず涙がたまったような気がする。
「……」
「…」
しばらく病院で慶太とお医者さんとみんなの沈黙が続いた。
「骨折してますね。3週間は無理に作業させないほうがいいでしょう。」
「わかりました。失礼します。」
先生はそう言うと、私たちを連れて外へ出た。
私がうつむいていると、先生のごつごつした手がふいに私の頭を軽く触った。
「佐藤、よく教えてくれたな。彼は心配ないから。もう遅いだろ。明日遅刻したら大変だ。今日はもう帰りなさい。」優しい声だった。
連なる短すぎる文章を理解するのにさほど時間はかからなかったが、私は少し躊躇して病室のほうを見た。
「でも…」
「帰りなさい。親御さんも心配するぞ。」
今度はさっきよりずっと怖い声色だった。
「…はい、さようなら」
私も逆らえなかった。
…背中が広い人がいないというのは、なんとも寒々しい。
今日は慶太がいない日。それだけでなんとなく退屈になってしまうなんて。
「おはようございます」
聞き覚えのあるしっとりした声。もしやと思って目をやると……
__嘘でしょ!?学校に来てる!!!!
そこには、左腕にギブスをはめた慶太の姿があった。
「お前、腕どうしたんだよ!!」
「はは、ちょっと折っちゃった」
普段と変わりない様子の慶太。それが痛々しくて、なんだか悲しくて、もどかしくて。私の目には思わず涙がたまったような気がする。