加納欄の壊れたピアス シリーズ23
大山先輩が触れる、いつもの唇の動きを感じながら。


違う……。


と、実感した。


あの時のキスは。


大山先輩じゃナイ……。


………………。


「おい、大丈夫か？」

大山先輩は、キスするのをやめると、聞いた。

気づかないうちに、涙が溢れ出ていたのだ。

「…………師……範」

あたしは、呟いた。

「え？」

大山先輩は聞こえず、聞き返した。


あのキス。


暗闇での戦術。


殺そうと思えば、楽に殺せたハズなのに。


あえて、タイミングを外して狙って撃ってきた。


ピアスのピンポイントなんて、師範じゃなきゃできない……。


戻って来たのだ。


あの人が……。


生きていたのだ。


あの倉庫での大爆発から、やっぱり生き延びていたのだ。


あたしを連れ戻すために。


あたしを闇の世界に引きずり込むために。


さっきのは、挨拶……？


それとも……。


やっと平穏な生活が過ごせると思ったのに……。


震えが止まらなかった。

孔明師範の事を思い出し、あたしの震えは止まらず、涙が止まらなかった。

大山先輩は、肩を震わせ涙を流しているあたしの理由がわからず、ただ抱き寄せ、しばらく優しく包んでくれた。



−おわり−


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