天使の羽が降る夜に



「うわっ・・・畜生・・・風が半端じゃねー」

勢いでルートへ入ってしまったが、なんだこの大荒れは・・・聞いてねーぞ。

それにしても、俺ってこんなに余裕のない男だったかな・・・。

最後の未紅の顔・・・困ったような顔だったな・・・。

舜への気持ちが落ち着くまで待とうと決めたのに・・・何焦ってるんだろうか・・・。



未紅の事がどんどん好きになって行って・・・気持ちが止まらない・・・。

「くっ・・・やべぇ・・・始めのほうで体力を使いすぎた」

マントを少し直そうとしたとき

「ぐわっ・・・・」

突然の風に煽られる。

まじでヤバイかも・・・。

今からじゃ・・・行っても戻っても同じ距離だ・・・。

俺の体力がもつか・・・。


勢いでなんて入るもんじゃないな。

これで未紅に会えなくなったら・・・未紅が困るな。

あんな事言われたままじゃな。

でも・・・もう正直どうでもいいような気さえしてくる。


『・・・・・なよ』

ん?

声がしたか?

まさかな。

『てめぇ・・・なよ』

お!?

やっぱり・・・耳が熱い・・・まさ・・・か。

俺は耳に手を当てる。

「舜・・・か?」

『何・・・俺・・・・・・・・だよ』

は?

何?

「無様な俺を笑いにきたのか?」

『・・・ざけんな!』

「・・・すまん」

舜に八つ当たりしても仕方ない・・・でも・・お前のせいでこんなになってるのに・・・。

情けなくて涙が出るよ。

『泣くな・・・泣くんじゃねぇ』

分かってるよ・・・だけどどうしようもなく切ないんだよ。

『未紅を・・・信じろ』

未紅を信じる?

いったい何を・・・。

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