マジック・エンジェルほたる
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 こうしてテストもすべて終了した。
 狡猾で老獪な蛍(この瞬間だけ)は、あまりに旨くいったので嬉しさが胸元から沸き上がってきて、笑顔になっていた。なにかすばらしいものが口から飛び出してそうな錯覚にも襲われた。とにかくハッピーだった。その表情は「お馬鹿さん」そのものだ。
 場所は、午後の体育館の裏であり、蛍とセーラは白い壁にもたれかかって話をしていたのだった。陽射しが辺りを真っ白にしていた。しんと光ってた。
「いやあ、それにしても…うまくいったねえ」蛍はニヤニヤして続けて「ごくろうさん、セーラ。あんたはよくやったよ!」
「…あのねぇ。」妖精は苦笑してから、気を取り直して熱心に言った。「そうそう、蛍ちゃん!ちゃんということきいてやったんだから…「封印」してくれるんでしょうね?そうよね?」
 その言葉の次の瞬間、蛍は
「嫌よ!」とカラカラ笑った。
「な?!なによっ。ひどいじゃないのっ!」
 セーラは激しく抗議した。「約束やぶるなんて最低っ!最低の人間のすることだわ!」「約束なんてやぶる為にあんのよ」
「そういうのを「身勝手」とか「恥知らず」とかいうのよっ!どっちにしてもレベルが低いわね!!」
「どうせノヴェルが低いですよ」
「ノヴェルなんて言ってないでしょ!レベルよ、レベル!ノヴェルなんていうのは小説のことよ」
 セーラは息を荒くして怒鳴った。…いやはや疲れる。この蛍という「出来そこない」には何をいってもわからない。馬鹿につける薬はない…とはこのことだ!
「蛍っ!」
 フト、気付かないうちに、赤井由香が近付いていて、そんな風に明るく声をかけてきた。由香はいつものように、可愛らしい猫のような瞳をきらきらと輝かせてとても眩しい。
 わっ、とセーラは驚いて素早く蛍の背の陰へとかくれた。なんとか見付からなかったらしい…。でも、まてよ!そういえば普通の人間には妖精に姿はみえないんだったわ。セーラは苦笑した。
「あら、由香ちゃん。何か用?」
「…あんた。」由香は皮肉たっぷりに微笑して、前髪を右手でかきあげながら、「あんた、カンニングしたでしょう?!」
 と、冗談めかしに尋ねた。ー確かに…。
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