マジック・エンジェルほたる


「よし。ー次、青沢っ、青沢蛍!」
  次の日の教室で、テスト用紙が返されていたる担任の神保先生に呼ばれて、蛍は冷静さを保ちながら教壇の前まで歩いていった。そして…、
「…あのぁん」
 と、意味不明の言葉を呟きつつ、先生の手からテスト用紙を掴みとった。
 いつも「冷酷で無慈悲な機械」と呼ばれて恐れられていた神保先生は、驚愕するほどにほんわりと微笑んだ。
「ほ、蛍っ!!すごいじゃないか!!先生、びっくりしたよ。…お前もやれば出来るんじゃないか!」
 神保先生はとても魅力的な表情で、蛍を褒めて、鋭い歯をきらきらと見せて笑った。
「えっ?」蛍は弾かれたように、右手に握っていたテスト用紙をバッと開いて慌てて覗き見た。そして、次の瞬間、
「う、嘘つ!!」と驚きの声を上げた。なんと、九十点だったのだ。蛍は感動して、
「…九十点なんて、いままでとったことないよ。…夢じゃないのかなぁ…?!」
 と、呟いた。いや、夢ではない!しかし、夢のほうがよかったのではないかと思う。自分の実力でテストをうけた訳ではないし、こうした嘘やズルはすぐにバレるものだからだ。「みんな、蛍がこのクラスのトップだ!なんとこの難しいテストで九十点(カンニングしたなら百点とれるのでは?)という成績だ!みんなも青沢を見習って、勉強をしっかりやるんだぞ!」
 神保先生は堂々と、そして青沢蛍を誇らし気にアピールして大声で宣言した。
「青沢蛍はバカではなかった!!やれば出来る人間だったのだ!」
 クラスの同級生たちの驚き、センセーションは凄まじいものがあった。驚愕、狂喜乱舞、喚声と拍手。とにかく、”出来そこない”の変貌はクラスの話題となったのであった。

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