マジック・エンジェルほたる
 なんといってもインテリジェンス(知性)に裏付けされたルックスだ。丸い顔、長くてさらさらした黒髪は両肩でおさげにしている。そして、おおきくピュアな瞳はこの少女のおとなしさを現し、全身は細くて肌は真っ白だ。胸はやっぱり大きくないけれど、それも少女らしさをあらわしている。ぴしっと制服を着て、背は低く、それも可愛い。
 その愛らしい唇から発せられる声は「薔薇色の声」、というより「よくききとれない声」でもある。あまりにも「か弱い」ので響かないのだ。
 その少女は掲示板を上目使いでみて、何の表情もみせずに、そのうち歩き去った。
「…あの子だれ?ずい分とおとなしそうなこじゃないの」
「あんた知らないのっ?まったく「お馬鹿さん」なんだからっ。一年A組の秀才少女、黒野有紀ちゃんよ。いつもいつも学年トップの成績をとるんで有名なこよ」
 由香はインテリのように蛍に教えた。そして「あんたとは頭の出来がちがうって訳ね!」と続けた。
「ひとのこと言えないでしょ!」
 蛍は思わず由香に飛び蹴りをくらわした。

  夕方。あらゆるものがオレンジ色に染まる時刻…そして空間。可憐な夕日とほんわりほんわりと揺れる雲たち。きらきらと光るファンタジック・ビジョン。それは永遠のように胸を締め付ける。なんともいえない景色だ。こういうものを大事にすべきだ。二人は思う。そして、螢と由香はそれを愛した。
 何ともいえないそんなしんと夕暮れの街路地を蛍と由香は歩いていた。ーそして、
「じゃあ由香ちゃん、また明日ね」といってふたりは別れた。しばらく歩いた由香は「ミッド・ナイト・ピース・ラブ・フォーエバー…」と上機嫌でなにかのアニメソングを口ずさみ、スキップした。もう蛍は、曲がり角を進んでいたので、姿は、見えなくなっていた。しかし、由香にとっては「そんなことはどうでもいい」ことであった。彼女の性格は、蛍のような「寂しがりやの甘えん坊」ではなくて「孤高を守る芸術家タイプ」なのだ。それが由香のパーソナリティだ。そして、それが彼女の強さだ。何が彼女をそこまで運んでしまったのだろう?しかし、そんな平凡で幸福な気分も、長続きはしなかった。おの残忍な「三騎士」のひとり、ダビデが由香に襲いかかったからだ。
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