ラバーズキス
和希は黙ったまま、あたしを送ってくれた。
「ありがとう。…和希くん、ごめんなさい」
あたしは和希に頭を下げた。
「アツシね、彼女と一緒にいると、彼女の事が一番好きだなって思うんだって」
黙ったままだった和希が口を開いた。
「でも、りんちゃんといるとりんちゃんのほうが好きだって思うんだって」
あたしは、静かに話す和希の顔を見た。
「アツシの前で泣いちゃうりんちゃんはずるい」
あたしだってわかってた。アツシの前で涙を見せるのがどんなにズルくて、どれだけアツシを困らせるのかを。わかっていても、心は止まらない。止められなかった。
「きっと、またアツシは悩むよ」
「…」
「もう、僕はアツシに会いに連れていかないよ」
「…うん」
もっともだった。親友を悩み困らせる女を連れていけるわけなんてない。
「アツシ、きっと今は彼女のところだよ。電話もかかってこないよ」
「…うん」
あたしはアツシの言葉を信じていた。きっと電話をくれると。
「それでも、アツシのことが好き?」
「うん」
「なんで?こんな思いしてるのに」
「なんでかな…」
あたしは自分でもおかしくなって笑ってしまった。

< 63 / 64 >

この作品をシェア

pagetop