ダンディ★ライオンの秘密の恋愛講座
 少し憂いを含んだ、完璧に整った顔に。

 わたしは、思わず見とれかけ……首を振った。

 もし、わたしがこのヒトを好きになったとしても、お互い、良いことなんてちっともないし。

『恋愛講座』なんて言っても、それは、演技の練習の上で。

 そもそも刹那は、本気じゃない。

 多分、那由他さんは心配するかもしれないけれど。

 これ以上嫌われても別にいいや、と思った。
 
「わたしは、別に面食いじゃないから、刹那がどんな顔をしているか、なんて関係ないわよ!
 だけど、あなたのイメージが『たんぽほ』だなんて聞いて、ちっとも信じらんなかっただけ」

 わたしがそう言うと、刹那は口の端だけでほほ笑んだ。

「ああ、それで俺を穴が開きそうなほど見てたのか。
 別に、たんぽぽってたって。
 春のあったかい日に野原で、ぽけぽけ咲いている奴ばかりじゃないだろう?
 あの花は、もともと雑草なんだ。
 日蔭のコンクリートの隙間にだって、しぶとく生える」

「じゃあ、なんでこの映画を最後にやめる、なんて言うの?
 自分で、雑草っていうのなら。
 ここまで来るのに、相当な苦労をしたんでしょう?
 せっかく俳優に……しかも、みんながうらやむ、トップスターになれたのに」

 わたしの質問に、刹那のほほ笑み方が、急にぞっとするほど自嘲気味になったかと思うと。

 質問には直接答えず、彼は言葉を続けた。

「俺の顔に惚れてくれなくて、何よりだ。
 あんたの面倒は、この撮影が終わってから手取り足とり見てやるから。
 先に、俺の楽屋で待っとけ。
 あいつに似ているあんたに。
 じっと見つめられながら、危険な殺陣のシーンを演れるほど、俺の心は強くないんだ」

 言って、刹那は小さくため息をついた。

「……たとえ、俺が。
 普段は、どんなに強い雑草だとしても、な……」





 

 





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