春風に流される
俺は懐かしくて、つい笑ってしまっていた。


「ははっ、その言い方、牧村そのものじゃん」


「…っるさい!何か用?」


牧村は面倒臭そうに言って、俺を睨みつける。


ストレートで綺麗な長い髪は高校時代と変わらないが、明るくなった髪の色と化粧のせいか、女を意識してしまう。


綺麗になったな、でも、それは……何の為に?


「2時間近くも待ってるなんて、馬鹿?」


「……あぁ、そうかもな。でも、お前を見つけたからどうしても話がしたかったんだ」


夜中でも人の通りがある街中で、高校の同級生と並んで話をするのは何とも不思議な光景だ。


連絡先さえ知らず、偶然に会うとは……。


「どうせ馬鹿にしたいんだろ?キャバクラなんかで働いてるって!」


「いや、別に。工場で働いてるって聞いたから…」


「お前には言ってなかったでしょ?何で知ってるの!?」


「……人づてに聞いた」


牧村は俺の顔を見ないようにしていたのか、ずっと下を向いて話をしていたが、やっとこっちを見てくれた。


「工場行って、夜はバイトしてる。私だって大学行きたかった!でも家計が苦しいから働いてお金貯めてから行くんだ。そーゆー訳だから、じゃあね」
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