春風に流される
「どちら様ですか?」


目の前にいる見慣れた顔の牧村は高校時代からは考えられない位、女らしく香水の甘い香りがした。


「悟…、元部 悟!覚えてるでしょ?忘れるはずないだろっ、俺だよ!」


「……ご存知ありません」


牧村にシラを切られている内に店内からボーイが出てきたので、イザコザを避ける為に客として入店したが未成年と分かり、すぐ様、店外に出された。


牧村と話したい。


どうしたら良いのだろう?


店内に入れないなら、待つしか方法はないか……。


俺は店外付近で牧村が出てくる迄、待つ事にした。


しゃがんだり立ったりしながら時間を潰し、足の疲労も溜まってきた夜中1時、牧村が店の裏から出てきたので、再度声をかけた。


「…お前、しつこい!」


今度は以前から知っている牧村の口調で、高校時代の思い出が蘇る。
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