春風に流される
「牧村…どこに住むの?どこの会社?」


「教えなきゃいけないの?何で?」


横を歩く牧村に話しかけても、いつもの突っ掛かかり女に戻っていた。


気に障る内容だったのか、そっぽを向き、膨れっ面になった。


「…いや、気になったから。ただ、それだけ…」


「……それだけ、か。なら教えない。アキちゃんと寄り戻せばいいっ!!この、バカッ!!」


牧村はそう言い放すと、俺を目掛けて、通学カバンを思いっきり振り下ろした。


「…ってぇな、な、にす…」


「東京に行ったら、お前がビックリするような彼氏を作るからな、絶対に!!」


牧村は俺を残して、猛ダッシュをして居なくなった。


長い髪が風に揺られて綺麗になびく。


俺は追いかける事もせずに、ただ見つめる事しか出来なかった。


この時に牧村が決心を固めた事は、本人にしか知らない決意。
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