春風に流される
───牧村とは卒業以来、会う事も無く、俺は東京に引っ越して、半月になる。


東京は人が多いし急かされた生活な気がする中で大学も慣れ始めて、友達も出来た。


大学帰りのある日、友達とカラオケに行こうと誘われて駅の近くにあるカラオケ店に行った帰りに…

見慣れた顔を見た。


化粧も施し、薄い水色の膝丈のドレスを着て、全身着飾っている。


キャバクラの様な店の外でお客らしき男性に手を振り、お見送りをしているかの様だった。


何故、アイツがこんな場所に居る?


卒業式の後、同級生から東京の有名菓子店の工場で働いていると聞いたのだが……。


疑問しか浮かばない。


俺は友達に別れを告げて、アイツの姿をただ立ち尽くして見守る。


お客らしき男性が去って、アイツが店の中に入ろうとしていたので駆け寄り、腕を掴む。


「…い、った…!」


「牧村、お前、どうして……?」


目の前に広がっている問題をぶつける。

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